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2004-03-23

不可触民とカースト制度

インドから帰ってきてから、いくつかインド関係の本を読んだ。

 特に、不可触民及びインドのカースト制度に関する本を三冊程読んでみた。三冊ともとても読みやすく、一日で読めます。いやー、奈落の底に落ちました。いきなり、目の前に底の知れない闇が広がったという感じで、しばらく、消化するまでに時間がかかった。

 「不可触民 −もうひとつのインド−」 山際素男 (知恵の森文庫)
 名著と言われているメルクマール的な本。確か、学生時代にも読んだ覚えがある。そう、この本は、1981年刊行、今から20年ほど前に出版された本である。20年経って、今も同じ状況とは思えないが、その一面、農村部ではあまり変わらないのではないかという思いもする。外国人(私のことです)が見ることのできないインドの衝撃的な一面をかいま見せてくれる。

 「インド 宗教紛争とカースト社会 シリーズ・アジアを見るジャーナリストの目」丸山庸雄 (梨の木舎)
 先日紹介した映画「ボンベイ」で扱われていた宗教暴動について、ジャーナリストの目から記した本。ある意味、映画の話しは一種の「夢物語」であることを教えてくれる。同時代に生きたインディラ・ガンジーについて筆者の目から見たレポートもある。一般にはブラマン階級が自己利益のためにインドを支配しているといった意見があるが、この本を読むと、そういうレベルを超えたところで、統治者にとっていかにインドを治めることが難しいか、考えさせられた。

 「不可触民とカースト制度の歴史」小谷 汪之(明石書店)
 三冊の中で一番、衝撃の大きかった本。淡々と事実が述べられ、それに対する学問的(聖典)裏付けがボディーブローのように効いて来る。

 カースト制度とは何か、何が基盤になっているのかについて、古代の聖典に遡ってその源流を探っている。2000年前の聖典に書かれたことが今なお社会的の隅々に影響を与え、人々の思考を支配していることに愕然とする。なぜ不可触民が、女性が差別されるのか、その精神的構造と社会構造、非常にわかりやすくまとめられている。

 そのカースト制度がなぜ衰退しなかったか、少なくともそれを打ち破る機会はあったのに、できなかった・・・、その答えはイギリス植民地支配にあった。カースト制度を植民地支配に巧みに利用したのである。 「インドはイギリスの宝石」という言葉の裏の意味を知って衝撃をうけた。それはイギリスがいかに熾烈で過酷な搾取を行ったかを意味しているからだ。

 高校の時に歴史の時間に習った「セポイの反乱」。この反乱がいかに歴史的に大事件であり、大きな意味をもっていたのかが改めて知らされる。そう、インドでセポイの反乱が起こったおかげで、日本は助かったのかもしれない。イギリス植民地支配政策(極東に対する)を根本から変えさせた大事件だったのだ。
 
 でも一番の衝撃は、「ガンジー」を否定していることだろうか。ガンジーは非暴力でイギリス植民地支配からインドを解放した偉大な人物。それに対する評価に変わりがない。しかし、ガンジーの限界は、「ヒンズー教」を温存したことにある。自分はブラマン階級出身であり、ヒンズー教的精神世界から抜け出すことができず、むしろ肯定さえしていた。不可触民を「ハリジャン(神の子)」と言い換えたことは、単なる言い換えで問題のすり替えである、不可触民は「アンタッチャブル」と言われることをむしろ肯定し、「ハリジャン」と呼ばれることを拒否する。なぜなら、本当にそう(アンタッチャブル)だから。インドで起こった留保制度(特定の被差別共同体に一定の優先枠を与える)が、むしろ、他の国々で成功していったことも皮肉である。

 三冊続けて読んだので、内容が混乱しているところもあるかもしれません 
 小谷書はわかりやすく文書による裏付けもあるが、どちらかというと他の二書に比べれば学問的なので、他の二冊で背景や実態を知っておくと、より理解が深まるかもしれません。少なくとも、なんでなんでこんな悲惨なことが・・・の意味を探ろうとする動機づけにはなると思います。

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