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2006-08-05

インドの時代ー豊かさと苦悩の幕開けー

Nakajima中島岳志さんの新しい本が出た。

 日本人の抱くインドのイメージというのは、どこか片寄っている。片方で、ガンジス川の夕日、悠久の時、ガンジーや仏陀に象徴される精神性の高さ、その片方で、旅行に行けば必ずお腹を壊す国、貧しさと衛生状態の悪さといったマイナスイメージがつきまとう。最近では、それに加えてIT大国というイメージが加わって、果たしてインドは先進国並の近代国家なのかあるいはまだ発展途上の国なのか、もう1つとらえどころがない。

 私自身、インドのイメージを捉えきれていない。いつも行くムンバイのスラムの子どもたちのギリギリの生活と、毎回いくたびに劇的に携帯の数が増えているIT社会、昔ながらの食堂の食べ物のおいしさと、マクドナルドの画一的だが非常にインド的なモダンな店、いったい今のインドってどんな国なんだろう…

 中島岳志さんは、文化人類学のセオリーで研究を進めて来た方で、フィールドリサーチに優れている。今回は、デリーの郊外に住む中間層に焦点を当てて、最近成長著しいインドの「中間層」が何を考え、何を悩んでいるかをリサーチした。

 とても読みやすくて、とても面白い。。デリーは都会だ。都会と農村との格差が著しいインドでは、これがそのままインド全体に当てはまるわけではないだろうが、実際にインドの国を動かしている「中間層」の人たちのことがよくわかる。

 そして、ある種の「爆弾」となりうる「ヒンドゥー・ナショナリズム」のこともきっちりと捉え、なぜ、ヒンドゥー・ナショナリズムが人々に受け入れられるのか、その素地はどこにあるのかについても分析している。この当たりは、中島さんの得意とする分野である。

 本の最後、私は非常に感動して涙が出た。宗教を全面に出すとどうしても排他的になりがちだが、他者を認めない世界に未来はない。
 「ばらばらでいっしょ、いっしょでばらばら」 
 多一論的な宗教観、非常に感銘を受けた。
 ぜひ読んでいただきたい一書である。

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