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2011-07-19

バイリンガル狂言

 昨日は、なんと狂言のはしごをしました。伝統的な狂言と、前衛的な狂言、両方ともとっても面白かったです。

 最初に行ったのは、御所の隣の金剛能楽堂。茂山社中の七三の会という発表会で、こばごんが出るからです。狂言の題目って、ほんまに面白い。伝統的な演目なんですが、その出演者に合わせて多少アレンジしてあるのですね。穴をくぐるところで、恰幅の良いおっちゃんの演者が「腹がつっかえる」というとものすごく笑えて、けど、そこだけトーンというか言葉回しが違うので、多分、演者に合わせたアレンジなんだろうなと思いましたが、そういう応用が利く狂言って楽しい。

 発表会なので子供も出るのですが、子供が本当に声は通るし、仕草は可愛いし、ほんま見ていて心が和みます。こばごんは、ほんま声が通って、お師匠さんの役がものすごく似合ってました。狂言の言い回しなのに、時々、あっこばごんの言い方や!っていうのが出ていて、面白いなぁて思いました。茂山宗彦さんが出てましたが、さすがに全然違う!最後は、茂山千三郎、千五郎、七五三さんの小舞もあって満喫しました。

 そして、次に行ったのが、「一目瞭然-Ofcourse」 茂山あきらさんとジョナ・サルズさんががやっておられるNOHO能法劇団の前衛的な狂言。これは大江能楽堂で演じられました。

 めっちゃ楽しかった!めっちゃ面白かったです!

 特に英語と日本語で演じられるバイリンガル狂言「濯ぎ川」。申し訳ないのだけど、両方分かる(^^)私としては、こんなに楽しかった狂言はなかった!まず、ティムさんが出て来て英語で前口上を言います。あこがれの日本に来て、能やお茶を習って、伝統的な日本女性をワイフにするハズだったのが、これがとんだ悪妻。しかも嫁の母親との同居。あー、ボクはイーオンで英語も教えられるし、素敵なOLと結婚してマンションに住めたハズなのに、なぜか嫁と姑にこき使われて、「川」で「手で」洗濯させられている。。。いいんだ、ボクは外国人のシンデレラになるんだ!

 もう、最初から、めっちゃ笑った笑った(^^;

 で、茂山童司さんが怖い悪妻で登場。。丸石やすしさんが姑。。日本語と英語まぜまぜの丁々発止の掛け合いは、ほんまに飽きさせずに楽しかったです。

 嫁と姑から別々の用事を言いつけられて、虐げられる夫、とうとうこの夫の逆襲が始まります。やるべきことを紙に書き付けさせるのです。あれやれ、これやれ、それやれ、と膨大なリスト。ここでは、日本語の狂言の言い回しと英語の言い回しが交互にあるのですが、なんと英語の方は高度な「韻」が踏んであって、あーーあれ、書き留めたい!非常に上手に訳してあった!いや、訳というよりは、新たな創作。とっても素晴らしかったです(韻が踏んであるので、変わった単語が使ってあり、単語の変換が多少追いつかなくて、聞き逃したところが少しあったのがめっちゃ悔しい)。

 で、姑が孫がもっと欲しいと言います。もっと励めと言います。するとティムは、ボクは一年に一度そんな気分になるかならへんかやって言い返します。姑が、おめーのは役立たずだと、かなり際どい会話。これが実は最後の下ネタの伏線。。

 そこで、事故が発生。妻が川に落ちて流されます。姑は助けてっていうけど、夫は書き付けに書いてないことはやらないって言います。後生だからって妻と姑が頼んで、これからはボクが一家の主人(マスター)だと誓わせた上で、ティムが杖を差し出し、Grab my stick!うぉーーー(^^;;;

 助けてもらった嫁、しおらしくなるかと思いきや逆ギレ(^^; で、やるまいぞ、やるまいぞで幕。

 いやーーーー、楽しい(^^; 狂言の濯ぎ川の、この下ネタ的味付けってバイリンガルだから出来ることなんでしょうね。。。いやー、ビックリしたと同時に、この見事な融合。。現代的な味付けにほんま感心しました!もう、めっちゃ満足~。

 前後しますが、最初の演目はパントマイムで演じられるサミュエル・ベケット作の「言葉無き行為I」
 茂山あきらさんが演じる全く言葉なしのマイム。ベケット独特の不条理な世界。。絶望的な世界が描かれます。棒に傘を取り付けて木と見立て(英語でTreeと書いてある)、枝に小さな傘まで付いているのが可愛い。茂山あきらさんの所作が本当に美しく、魅入ってしまいました。今回はあんまり笑うところはなかったけど、狂言の面白おかしい世界にベケットのおかしく悲しい世界が融合したら、サーカスのクラウンのような、おかしくて悲しい新たな世界が生まれるのだろうか、そこを目指しているのかなぁってチラッと思いました。

 次がコンテンポラリーと古典舞の「北の鏡」 実は、次に気に入ったのが、これでした~。
 鏡に魅入られる女性とその鏡を操る男(パンフには死に神って書いてあった)がダンスで演じられます。女性はコンテンポラリーダンスを踊り、男は能の舞。ものすごくマッチしているのが不思議で、パンフを見たら女性ダンサーは藤間流って書いてある。。なるほど。。モダンダンスと能の舞との融合し、音楽も、ピアノの曲に鼓と能管が入って、すごく素敵。で、ここで発見したのは、「後見」役の二口大学さん!能や狂言の後見って、舞台の後ろに控えていて物の出し入れをするのだけど、この二口さんは鏡の出し入れに伴い、一緒になって踊って(?)る。じっと控えているより、遙かに違和感がなくて、非常に良かったです。

 で、最後がサミュエル・ベケット作「ロッカバイ」です。女を演じるのは能の松井彬さん。面を被った伝統的な能のスタイル。飛鳥井かゞりさんは真っ黒な衣装で語り。。際限なく繰り返される同じセリフ、いえ、その際限なく繰り返される同じセリフが、少しずつ少しずつ変わっていって終末に近づく。。少し抑揚をつけて歌うような語り口が非常に能の所作に合っていて、不思議な雰囲気を醸しだしてました。能の面って、見る角度によって全然違って見えるっていうけど、ほんまに見え方が違って、悲しそうだったりして、不思議でした。どっと座り込むと急に小さくなるのも不思議だった。。後ろでずっと揺り椅子をこれまた二口さんが揺らしているのも不気味な感じだった。「もう、やめたら」っていうかゞりさんの声がしばらく心の中にこだましてました。
 


 

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コメント

ご観劇ありがとうございました。
バイリンガル狂言は、
英語のわかるめぐむさんにはきっと気に入っていただけると思ってました。
英語がわからない私でも面白いと思いますし、
わかれば、倍楽しめますよね〜(=^・^=)

投稿: かゞり猫 | 2011-07-19 12:13

かゞり猫さま。
 お疲れさまでした~。
 本当にうまく作ってあるなぁと感心しながら見ていて、思わぬ得をさせてもらいました(^^)。パンフレットに載っていたかゞり猫さんのAgaveの写真、めっちゃ気になります。また演じられる時があったら教えて下さいね~。

投稿: めぐむ | 2011-07-19 12:31

ありがとうございます。
バイリンガル狂言は、そういう意味でしたか^^ あとからでも、わかってうれしいです。なるほど~~~~。

確かに、「イーオン」も「マンション」も聞こえてきました。でも、それだけじゃあねえ><
ただ「イーオン」はお店の「イオン」と思ってしまいましたけど…。

あと「マスター」は私でもわかった。

下ネタは、たぶんそんな意味のことなんだろうなあと思ってました。しかし、杖を差し出したときのセリフは、そんなのだったんだあ!

解説、ありがとうございましたm(__)m

投稿: pega | 2011-07-19 15:49

pegaさん、
 所々単語が聞き取れるように言ってはったから、大体は想像できるし、十分分かるように作ってありましたよね~。そこに感動したかも~。童司さんはアメリカンスクールに行ってはったらしいです。さすがです。

投稿: めぐむ | 2011-07-19 16:08

「濯ぎ川」ですか。なるほどこれならバイリンガルになりますね。ちょっと気になるっていうか、狂言はよくオノマトペを真面目に「せりふ」として言いますよね。垣根をのこぎりで切るときに「づかづか」とか、魚を切るときに「すっぽり」とか、陶器が割れたときに「ぐゎらり、ちーん」とか。私の記憶では「濯ぎ川」では旦那が洗濯をする時に「じゃぶじゃぶ、それじゃぶじゃぶ」と言っていたと思います。これ、英語で何と言っていたのかな(笑)。

投稿: boriron | 2011-07-19 18:29

borironさん、こんにちは。

 洗濯するときは、なぜか日本語で「がわがわ、がわがわ」って言ってはりました~。オノマトペはやっぱりなかなか訳せないみたいです(笑)。ただ一番鶏がコケコッコーっていうところは、cook-a-だったように思うのだけど、肝心のその韻を踏んだ素敵なところが覚えきれなかったです(--;今でもものすごく気になります。もう1回観たいです。
 パンフレットを読んでびっくり。濯ぎ川って、元々はフランス喜劇だそうです!元ネタってご存じですか?狂言って、ほんまに面白いですね

投稿: めぐむ | 2011-07-19 19:02

へぇ、そうなんですか。劇作家の飯沢匡氏が書いた新作狂言だったと記憶しておりますが、その元ネタがフランス喜劇だったのかな?

投稿: boriron | 2011-07-19 22:36

borironさん、
 解説によれば、「16世紀フランスの古典小咄「ル・キュヴィエ[洗濯桶]」を下敷きにして、劇作家・放送作家の飯沢匡が1952年[昭和27年]に書き下ろした原作を狂言にアレンジしたものです。」だそうです。私も今ググって知りました(^^)

投稿: めぐむ | 2011-07-20 08:26

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